自然環境の美しさと人々の温かさが際立つのが山梨の魅力ではないでしょうか。山梨のシェフたちと交流する機会がよくありますが、彼らの多くは同じ学校の出身や地元生まれの方々です。一度県外に出ても再び地元に戻ってくるのは、山梨にすばらしい食材と風土があるからだと思います。

山梨には海こそありませんが、豊かな土地と富士山の伏流水が自慢です。そのおかげで多様な淡水魚が育ち、甲斐サーモンのような美味しい魚がいます。来店されるお客様にそうした淡水魚ならではの魅力をお話しすると、山梨らしさを感じるようで、とても喜んでいただけるんです。その甲斐サーモンのレシピだけでも10種類以上あり、季節やお客様の来店頻度に応じて少しずつアレンジを加えています。

もともとクラシックなフレンチを主流としていましたが、最近では地元らしい食材との融合を意識するようになりました。山梨に新たにお店を構えるシェフも増えましたので、独自のものがお出しできるよう日々試行錯誤を重ねています。

私自身、東京のレストランで働いていて地元に戻るつもりはありませんでしたが、地産地消の流れに触発され、地元山梨で自分の店を持つことを決めてオープンしました。当時は山梨にフレンチの店が少なかったこともあり、地元の人々にフランス料理で感動を届けたいという思いがありました。一方で、小さい頃からお雑煮で食べていた鳴沢菜などはいわば日常の野菜です。それらをお客様にお出ししていいものかと悩んだこともありましたが、次第に地元らしい野菜が県外からのお客様に喜ばれることを実感しました。最近では在来種にも注目していて、例えば、フォアグラと伝統野菜の大塚にんじんとの組み合わせは非常に相性が良く、自慢の一皿となりました。

これからもフランス食材と山梨らしい食材を融合させ、自分らしいテロワールを表現した料理を作っていきたいと思っています。